【作品#0284】ツナグ(2012)

2010年代

ツナグ

2012年の日本映画
上映時間は129分

死者と生きている者を一度だけ再開させることのできる仲介人「ツナグ」を祖母から引き継ぐことになった男子高校生の渋谷歩美。彼のもとへ死者との再会を望む依頼が次々に舞い込んでくる。

監督は平川雄一朗
音楽は佐藤直紀
撮影は中山光一

松坂桃李(渋谷歩美)
樹木希林(渋谷アイ子)
佐藤隆太(土屋功一)
桐谷美玲(日向キラリ)
橋本愛(嵐美沙)
遠藤憲一(畠田晴彦)
別所哲也(渋谷亮介)
本上まなみ(渋谷香澄)
八千草薫(畠田ツル)
仲代達矢(秋山完之)

辻村深月のベストセラー小説の映画化。死者と生きている者を「ツナグ」話で、本作公開の前年に東日本大震災で多くの犠牲者を出したことを思い出した人も多いだろう。また、人間いつか誰もが死ぬ。身近な人を亡くした人なら、今生きている間に生きている人とより「繋がろう」と感じるようなテーマだろう。

 

合計3組の死者と生きている者を「ツナグ」本作は、短編が3つあるような感じの作品である。そしてその合間に挿入される主人公の両親の死を最後に明らかにする展開になっている。この映画の世界観やルールを受け入れられるかで感想は大きく異なるだろう。ただ、この映画の世界観故に主人公の両親が亡くなっているというのは受け入れがたいものがあり、映画を見ている観客の現実世界とどうリンクさせてどう感じればよいのか理解に苦しむ。

 

1つ目のエピソードは、この「ツナグ」を主人公が初めて体験し、それがどのようなものかを観客向けに説明する意図もあるだろう。ここで、報酬を貰わないことを説明し、「ツナグ」に対して半信半疑のキャラクターを登場させておき、2つ目以降のエピソードでは、報酬の話も、主人公を疑うキャラクターも出てこない。ここでその件は終わらせているというつもりに見えるが、主人公も死者と会う生きている者も、何なら死者の側ももっと疑ったり、実際に会えた時に驚いたりすべきだろう。ホテルの一室で実態のある死者と話したり触れ合ったりできるところで、ファンタジー感を極力減らそうとしているのだろうが、ただ会って話すだけというのも味気ない。この序盤に八千草薫という大御所を配することも説得力をもたらす意図があったことは想像がつくのだが、如何せん遠藤憲一が演じた息子のエピソードがあまりにもすっからかんだった。彼が死んだ母と会えたとしてあそこまで改心するとも思えない。そもそも土地の権利書の所在を確認するために、こんな怪しい「ツナグ」に頼ろうとするところも違和感がある。

 

2つ目のエピソードは、同年の話題作「桐島、部活やめるってよ(2012)」でも強烈な印象を残した橋本愛が抜群の存在感を放っており、3つのエピソードの中では一番印象に残るものになっていると感じる。ちょっとしたすれ違いや嫉妬などがもたらす悲劇としても、3つのエピソードの中で一番出来は良いと言える。繰り返しになるが、やはり橋本愛は凄いなと思わせる。

 

2つ目のエピソードが色んな意味で印象に残るので、最後となる3つ目のエピソードがあまりにも弱々しい。キラリがフェリーの事故で死んだなら誰も事情を知らないのは考えにくい。また、田舎へ帰る事情をキラリが功一に伏せておく必要も感じない。ここでキラリと繋がることは彼女の死を意味することになるのだが、物語的にはほぼ確実に「繋がるのだろう」と観客側は察している。7年間行方が分からない彼女がやっぱり死んでいたという悲劇を描くにしては、エピソードの背景描写は明らかに足りていないし、田舎出の若者が都会で少し優しくされたくらいで…というのが正直感じたところだ。

 

3つのエピソード全体に言えることだが死者との再会シーンがやや説明的な印象を覚える。さらには主人公のナレーションが多く挿入されるのもそれに追い打ちをかけ、129分という上映時間は結構長く感じる。あとは、原作通りなのだろうが、死者と生きている者が会える時間が一夜というのは長い気がする。1分とか3分とかもっと短い方が、生きている側が死者と会うまでの準備、実際に会ってから何を話すのか、会った後に何を得たのかをドラマとして表現できたように思う。

 

主人公の両親が謎の死を遂げているという事実が割と前半で明かされる以上、最後に主人公の話になるのは分かる。ただ、真相が明らかになっただけで、上記3つのエピソードで主人公が何を得たのかがあまり見えてこない。主人公は両親の不審死で何か大きな傷を負っているようにはあまり見えない。むしろ祖母が傷を負っており、主人公がその祖母の傷を癒すという結末となっており、ここは少し驚きを感じた部分ではある。

 

「死んだ人ともう一度会えるなら…」と考えると、必然的に今目の前にいる人を大切にしようと感じるものだし、本作も描きたいところはその辺りだろう。確かに本作を見ればそんなことも考えるとは思うが、心に響くものはなかった。映画にするよりも、一話完結の連続ドラマにした方が良かったのではないかと感じる。あと、本作では一番の大御所と言える仲代達矢の使い方があまりにももったいないと感じた。

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