【作品#0237】ちいさな独裁者(2017)

2010年代

ちいさな独裁者(原題:Der Hauptmann)

2017年のドイツ/フランス/ポーランド合作映画
上映時間は119分

第二次世界大戦末期、1945年4月のドイツ後方。脱走兵のヘロルトは、見つけた車の中に軍服を発見し、それを身に纏う。そんな彼を発見した兵士がヘロルトを大尉だと思い、共に行動することになる。

監督/脚本はロベルト・シュヴェンケ

マックス・フーバッヒャー(ヘロルト)

実在したウィリー・ヘロルドを題材にした作品。デビュー作「タトゥー(2002)」で注目を集め、以降は「フライトプラン(2005)」「ダイバージェントNEO(2015)」などハリウッドを活動の場としていたロベルト・シュヴェンケ監督が15年ぶりにヨーロッパで撮った作品。

 

主人公が他の誰かに成りすますタイプの映画は「太陽がいっぱい(1960)」や「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002)」など多数あるが、大体最後には主人公が身ぐるみを剥されてしまうというのがオチだ。確かに本作も終盤に大尉への成りすましがバレた主人公は裁判にかけられて、当初は絞首刑が妥当だと言われるが、証人が「軍人らしい行動をしていた」と言ったり、別の男が「こんな時代だから蛮行も増える」と言ったりして、彼の行動を肯定する発言も出てくる。終いには彼は妥当だと言われた絞首刑を免れ、懲罰として前線へ送られるという判決になる。彼の行き過ぎた行動には観客も同意できないし、彼が処刑されることがある種のカタルシスになるかと思えば映像的にはそうではなかった。その判決後、彼は脱走を図り、脱走した先で捕まって処刑されたことが映像ではなく、字幕で説明されるというものだ。実話ベースなのだが、本作は脱走兵で始まり、再び脱走するところで彼の映像は終わる。身ぐるみを剥されたら所詮は一兵卒の男でしかなく、ナチスドイツのために本気で戦おうとしている男ではないのだ。

 

ただ、主人公は権威への憧憬があり、脱走兵という逃げの立場から、軍服を得て脱走兵を処刑する追う立場へと変わる。「立場が人を変える」とよく言うが、主人公は軍服を着て、部下を従えることで心地よさを覚え、次第に決断する力や、立場が上になる方法を身に着けて、軍人としては間違いなく成長している(良くないことだが)。当然ながら立場が上になればなるほど、最前線で危ない目に遭う機会も少なくなるので、ある種の防衛本能とも言えるかもしれない。また、たとえ温厚な人間でも、ある立場や肩書を得ると、途端に人が変わったり、行動を抑制できなくなったり、今の立場を守るために突飛な行動を取ったりすることはある。それはこのドイツだけでなく、日本においても家庭、学校、職場、組織などにいくらでも当てはめることができる。

 

そしてラストは再び脱走することを主人公は選択する。彼は脱走して大尉に成りすまし、多くの兵士をコントロールする成功体験をしてしまった。最前線で戦うのが嫌なのは当然として、また脱走してうまく行くだろうとでも思っていたのだろう。所詮は脱走兵の主人公が、1つの成功体験をもとに再び動き出すのもなかなか興味深い。

 

エンドクレジットでは、モノクロ映像からカラー映像に切り替わり、ナチスドイツの兵士が街で現在のドイツ人を取り締まろうとするという茶番(!?)映像が流れる。2017年ともなればドイツは敗戦から72年を数えることになる。ナチスドイツが行った多くの蛮行も戦後は当然の如くすっかり影を潜めたが、現代においても本作で描かれたテーマが地続きであることを示しているように思える。

 

日本語タイトルからは想像しがたい内容だが、多く作られてきた成りすまし系の映画としては申し分ない出来だし、遠く離れた日本においてもそのテーマは十分に伝わるものであった。

①ソフト版

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