【作品#0157】チャンプ(1979)

1970年代

チャンプ(原題:The Champ)

1979年のアメリカ映画
上映時間は123分

ボクシングの世界チャンピオンだったビリーは妻に逃げられ、8歳になる息子のTJと2人暮らし。酒とギャンブル浸りの生活を送っている。息子の貯金を盗んでまで賭けたら大儲けをしてビリーはTJに馬のプレゼントをする。その馬が競走馬として出走準備をしていると、偶然にも別れた妻のアニーが馬を見物にやって来る。

監督はフランコ・ゼフィレッリ
音楽はデイヴ・グルーシン
撮影はフレッド・J・コーネカンプ

ジョン・ヴォイト(ビリー)
リッキー・シュローダー(TJ)
フェイ・ダナウェイ(アニー)
ジャック・ウォーデン(ジャッキー)

「チャンプ(1931)」のリメイク作品。ライアン・オニールと息子のグリフィン・オニールで決まりかけたが、グリフィンがTJ役よりも年上だったことで断念。半年に及ぶTJ役探しの末、TJ役はリッキー・シュローダーが射止めた。ジョン・ヴォイトは、監督から見せられたリッキー・シュローダーの映像を見て本作の出演を決めている。また、ボクシングシーンの指導は、「ロッキー(1976)」を監修した人が担当している。

 

本作は日本でもヒットを記録しており、いかにも日本人好みの映画だろう。引き裂かれた親子のお涙頂戴的な話で、当時もこんな話は日本でもよく作られていた。ただ、「泣ける映画」=「良い映画」ではない。

 

本作の主人公は、頭部の負傷が原因でボクシングを引退しており、ギャンブルをして酒を飲んでドラムを叩いているだけで、挙句TJの貯金に手を出してしまうほどのクズである。TJは学校にすら行っていない。そんな状況を改善すべく、チャンプが酒やギャンブルを辞めようとすることはないし、お金を稼ぐために今よりも給料の良い仕事を探すことももっと長く働くということもしていない。金に困ると別れた妻に金をせびり、ついには警官を殴って留置所へ入れられてしまう。そんな状況になっても、TJはチャンプと言って慕ってくれる。その純粋さからチャンプはTJに「アニーのところへ行け」と言って突き放す。チャンプはこの状況でも自分を改善させる気はなく他人任せにしようとする。たらい回しにされたTJがアニーのところへ行くと「実は私がお母さんなのよ」と明かされる。これを受け入れられないTJが再びチャンプのもとへ帰って来る。こいつらはどこまでTJを傷つければ気が済むのか。

 

そしてようやくチャンプは立ち上がる。頭部の負傷が原因でボクシングを引退しており、復帰する際にも頭部の負傷については警告を受けている。ギャンブル好きの主人公が死ぬかもしれないが大金の入るボクシングという大博打に打って出ただけなのだ。そして案の定死ぬなんて無責任もいいところだ。ここはせめてチャンプが他の仕事にもチャレンジしてうまくいかず、「自分にはボクシングしかない」と追いつめられて復帰するという筋書きにすべきだろう。しかも復帰戦がタイトルマッチで、ちょっとトレーニングしたくらいのチャンプが勝利するという筋書きも出来すぎだ。

 

それからTJの母親であるアニー。息子を置いて家を飛び出し8年もの間、TJを放ったらかしにしていた。ファッションショーで成功を収め、新たな夫と共に豪華な船に豪邸まで所有する大金持ちである。これだけの状況が整えば、嫌な言い方になるがお金の力でTJを取り戻すこともできたはずだ。なのにアニーは8年間TJを取り戻す努力すらしてこなかった。馬主になったTJに偶然会うこともなければアニーは今後も何もしなかっただろう。そしてその後、「私にも子供に会う権利がある」とチャンプに言うが、怒られたってしょうがない。ファッションショーで成功を収めるアニーを自立した女性として描いているかもしれないが、自分の産んだ子供に対してあまりにも消極的すぎであると感じる。そしてなぜ息子を置いて出て行ったのかの説明が一切ないのも気にかかる。

 

「何か行動するにしても遅すぎることはない」というメッセージは多くの映画で語られてきた。しかし本作は逃げに逃げを重ね、何の努力もせずにずるずる過ごした結果、最終的にチャンプの死が訪れただけである。チャンプにしてもアニーにしても、行動原理や心理描写にあまりにも余白が多すぎて、「他にどうにかできただろう」と思ってしまう。しかも、アニーにとってはチャンプが死んだことで自分の手元にTJが帰って来ることになるのだから、見ていてあまり良い気はしない。

 

ただ、TJを演じたリッキー・シュローダーが素晴らしく、眼前で父が亡くなる場面で何度も「チャンプ!」と連呼する場面は感動を呼ぶ。彼の演技に救われている部分は大いにある。

 

こんな親の姿を見せられたら子供がかわいそうで仕方ない。何も努力せずに、最後にボクシングだけ頑張って死にました。その結果、8年間放ったらかしにして今更自分のものにしたいと思っていたアニーのところへTJが戻ってきました。反面教師映画だとは思うが、これが良い映画だとはとても思えない。

①<ジョン・ヴォイト(ビリー役)/リッキー・シュローダー(TJ役)>

主演の親子役を演じた2人による音声解説。リッキー・シュローダーは解説の中で「31歳になる」と言っているので、2001年頃に収録したものと思われる。2人が当時のことを振り返りながら撮影時の話を中心に話してくれるが、後のシーンの話を先に話してしまったり、話すことがなくなったのか別の映画の話をしたりと1つの音声解説としてはイマイチ。さらに、リッキー・シュローダーは音声解説中に何度も泣いており、自分の感受性の高さをジョン・ヴォイトから「それも才能だ」とまで言わせることになっている。親子役を演じた出演者が20年以上の時を経て一緒に観ることになるところに自分もお邪魔しているという変な気分になる。

「チャンプ(1931)」…オリジナル作品
「チャンプ(1979)」…リメイク

①テレビ朝日版(1981年10月11日「日曜洋画劇場」)※ソフト未収録

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