タイトル
真実の瞬間(原題:Guilty by Suspicion)
概要
1991年のアメリカ/フランス合作映画
上映時間は104分
あらすじ
舞台は赤狩りが行われていた1951年のハリウッド。映画監督のデイヴィッドは過去に共産党の集会に参加したことがあるとして映画会社から監督としての仕事をもらえなくなってしまう。
スタッフ
監督/脚本はアーウィン・ウィンクラー
音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード
撮影はミヒャエル・バルハウス
キャスト
ロバート・デ・ニーロ(デイヴィッド・マレル)
アネット・ベニング(ルース・メリル)
ジョージ・ウェント(バニー・バクスター)
サム・ワナメイカー(フェリックス・グラフ)
マーティン・スコセッシ(ジョー・レッサー)
感想
共産主義者の疑いをかけられる主人公は映画監督のジョン・ベリーがモデルとなっており、この話は後述する。ちなみにタイトルの「瞬間」は「とき」と読む。
本作を見れば、映画監督のエリア・カザンや彼の代表作「波止場(1954)」を思い出す。その「波止場(1954)」に影響を受けた「明日に処刑を(1972)」の監督だったマーティン・スコセッシが出演し、同じく「波止場(1954)」に影響を受けた「ロッキー(1976)」のプロデューサーだったアーウィン・ウィンクラーが本作の監督を務めている。
仕事がもらえなくなった主人公は仕事を得るために旧友を訪ねては「面倒なことになるから帰ってくれ」と言われ、親友だったバニーは委員会に屈して「お前の名前を証言する許可をくれ」と言ってくる。売れっ子監督で人脈もあるデイヴィッドだからこそ、一度共産主義者の烙印を押されると、今までたくさんいた周囲の人間がどんどん離れて行くのは見ていてつらいものがある。ただ、本作はこの辺りの描写が基本的に淡泊だし、映画の始まりがやや問題である。中盤にデイヴィッドが雇われ監督として俳優の信頼を得て撮影する様子こそ描かれるが、それこそ冒頭に監督として当たり前に活動して、周囲から信頼を得られている様子が必要だったのではないかと思う。確かに冒頭はパーティに多くの人がいて、バニーとの友情こそ冒頭に描かれていたが、その段階でもすでに赤狩りの話が出てきており、本題に入るのがちょっと早いのではないかと思う。
また、非米活動委員会で共産党員の名前を証言することは何を意味したか。映画人で証言した代表的な人物と言えば、映画監督のエリア・カザンだろう。本作の後の話ではあるが、エリア・カザンは長年の映画界への貢献を表して、1998年にアカデミー賞名誉賞が与えられた。本来、名誉賞ともなれば会場の全員がスタンディングオベーションを送るものだが、一部には座ったまま拍手すらしなかった人たちもいた。エリア・カザンの証言によって、新たな共産党員の名前を挙げたわけではないので、彼の証言が原因で不都合を被った人はいないとされるが、「証言」をしたこと自体をよく思わない人がいるといて、それを何十年の時を経ても一部からは許されていないのだから、そういうことなのだろう。
ただ、本作を見た後の情報収集で知った話だが、モデルとなったジョン・ベリーは実際に共産主義者であったのだ。さらに、本作の当初の脚本と監督だったエイブラハム・ポロンスキーも共産主義者だった。両者とも証言を拒否してハリウッドから追放された過去がある。そして、本作は製作過程で、主人公が共産党員であったという設定を排除することになり、エイブラハム・ポロンスキーは監督を降りて、脚本家としてのクレジットを削除するように要求したという経緯がある。
もちろん私も共産主義には反対だが、当時の赤狩りでは実際に共産主義者であろうとなかろうと、疑惑が浮上した時点で、証言を拒否して収監されるか、仲間の名前を売るしかなかったのだ。確かに主人公が共産主義者でないのに証言を求められるという冤罪として描いた方が映画的には分かりやすいし、観客も主人公に共感しやすくなるだろう。ただやはり現実と同様、実際に共産主義者だった過去がある点を盛り込んだうえで描いた方がより歪な社会を表現することができたのではないかと思う。
非米活動委員会は共産主義者を排除することができるなら、別に共産主義者だろうが、共産主義者でなかろうが徹底的にさばいていた。ドラマとしては、共産主義者と、共産主義の疑いをもたれる友人が同じ土俵で証言を求められるとかにすればもっとドラマとして描くことはできたと思う。
また、本作の終盤でも不自然な質問や強引なこじつけをする委員会側はやはり悪として描かれている。共産主義者であること自体は罪でなかったわけで、仮に共産主義が良くないとしてもこのやり方は間違っていたのは周知の事実である。
共産主義者だったという過去をなかったことにするという変更からも分かるように当時であろうと本作が製作された現代であろうと共産主義者は擁護できないという姿勢なのは理解できる。共産主義者の主人公が委員会を非難して勝利を得てしまうのも違うわけで。ただ、ここはもっとチャレンジしてほしかったところである。
吹替情報
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