タイトル
桜のような僕の恋人
概要
2022年の日本映画
上映時間は128分
あらすじ
カメラマンを目指す朝倉晴人は、美容師の有明美咲に一目ぼれする。何度かデートして付き合うようになるが、晴人は美咲と次第に連絡が取れなくなっていく。
スタッフ
監督は深川栄洋
音楽は伊藤ゴロー
撮影は柳田裕男
キャスト
中島健人(朝倉晴人)
松本穂香(有明美咲)
永山絢斗(有明貴司)
桜井ユキ(吉野綾乃)
要潤(神谷医師)
及川光博(澤井恭介)
感想
宇山佳佑が2017年に発表した同名小説の映画化。王子キャラとして知られるSexy Zoneの中島健人が主演し、彼が師事するカメラマンを同じく王子キャラで知られる及川光博が演じた。
病気が若い男女を引き裂いてしまう話は小説にしても映画にしても一定のニーズがあるのだろう。21世紀に入ってからの邦画だけでも、「1リットルの涙(2004)」「世界の中心で、愛をさけぶ(2004)」「タイヨウのうた(2006)」「君の膵臓をたべたい(2017)」などの作品が思い浮かぶ。ただ、病気になるのはいつも女性側ばかりであることは気にかかる。「弱い女性」を「男」が守ろうとするといういう構造は今も昔も変わらずなのか。
本作は病気を扱った作品でもあり、早老症といった特定疾患を取り上げている。これによって、知られていない病気への理解を深め、病気で苦しむ人たちへの支援へ繋げることもできるだろう。ただ、病気に対する説明や症状の進行度合いの描写の程度を考えると、割と感動ありきのラブストーリーに仕上げたかったのだろうと感じる。
病気によって、付き合っている相手に自分の姿を見せたくない、心配させたくないとして強引に別れを選択する展開はかつての物語や映画で山ほど描かれてきた。美咲が早老症に何もできずふさぎ込み、最後の最後になってようやく写真展に行くことになるのだが、映画的にはふさぎ込んでいる間にたくさんのことを考えたはずなのにそれがあまり見えてこない(晴人への対応を後悔するとか)。早老症により美咲と判別できないほどに年老いた状態で晴人は気付くことができず、それを彼女の死後に気付くという感動ありきの逆算的な展開に見えてしまう。また、あまりにも過保護で晴人に対して攻撃的だった美咲の兄が、「実は良い人で…」というのも逆算的に感じる。
病気がある程度進行すると、美咲は映画内で素顔を見せることはなく、死に際の老婆の姿まではフードを被り、サングラスをしているので、どんな状態になっているかは観客側が想像するしかなくなってしまう。これは演出なのか、女優の事務所側の都合なのかまでは分かりかねるが、その病気の進行でどんどん老けてしまうことに対して美咲が何もできない悲しみを表現すべきだったと思う。映画の類は異なるが、病気や老いを婉曲的に描いた「ザ・フライ(1986)」で主人公が死ぬまでの間の変化を特殊メイクで7段階くらいに分けて表現していたところは見習うべきだ。ラブストーリーとしてもまだ「ザ・フライ(1986)」の方がよっぽど描けていたと感じる。
美咲は外に出られないほどの状態になると、基本的に何も行動しなくなるので、割と急展開する序盤に比べ、映画は急に動きを止めてしまう。活発だった故に落ち込んでしまうその落差はあるのだろうが、いくら病気とは言えほとんど何の行動も起こさない主人公は色んな意味で見ていられなかった。
一方で、晴人はカメラマンになる夢を簡単に諦めたことを美咲に叱られる。その後、一度逃げて辞めた事務所へ頼み込んで再びそこで働くことになったことを美咲に報告しているが、逃げて辞めた事務所へ頼み込みに行く場面は描く必要があったと思う。せっかく晴人は美咲のおかげで行動に移そうと思ったのに、その行動する場面を端折って結果だけ口で説明するだけってそれはダメだろう。辞めた事務所にお願いに行くなんて、これほど屈辱的で勇気のいる行動はない。これこそドラマとして描ける部分だし、変わろうとする主人公を描くドラマの肝を外していないか。また、本作は実質1年程度の出来事を描いているのに、すぐに後輩が出来て…というのはちょっと早すぎだと感じるし、ドラマとして安易すぎやしないか。晴人の成長は他にもっと描くことができただろう。
あと、演出として気になったのは、何度か挿入されるCGの桜でシーンを繋ぐところだ。そこで季節の移り変わりを示しているのだと思うが、なぜCGの桜なのかはよく分からない。どうせなら主人公たちが最初にデートする場面の桜の木を季節ごとに映すことでも表現できたと思う。わざわざCGを使って表現する意図が伝わってこなかった。
人間誰しもいつ死ぬか分からない。早老症によりもう1年も生きられないかもしれない。こんな状態になったからこそ、落ち込んだ美咲を晴人や周囲の人間が励ましながら、美咲だけでなく周囲の人間も1日1日を大切に生きていこうとする物語に着地してほしかった。美談にしているようであまり好きになれなかった。
音声配信
Spotifyはこちら
Apple Podcastはこちら
Amazon Musicはこちら
YouTubeはこちら
予告編
Netflix
リンクはこちら
取り上げた作品の一覧はこちら


コメント