【作品#0322】マジック(1978)

1970年代

マジック(原題:Magic)

1978年のアメリカ映画
上映時間は107分

ファッツと名付けた人形を使った腹話術で人気になったマジシャンのコーキーは、エージェントのベンからテレビの仕事が決まったと知らせを受ける。しかし、その出演の条件が健康診断を受けることであり、コーキーはそれを嫌がり田舎に逃げ出してしまう。

監督はリチャード・アッテンボロー
音楽はジェリー・ゴールドスミス
撮影はヴィクター・J・ケンパー

アンソニー・ホプキンス(コーキー)
アン・マーグレット(ペギー)
バージェス・メレディス(ベン)
エド・ローター(デューク)

アマチュアのマジシャンでもあった脚本家のウィリアム・ゴールドマンが自身の小説を脚色して映画化。監督のリチャード・アッテンボローは念願の企画「ガンジー(1982)」の製作資金を調達するために、「遠すぎた橋(1977)」と本作を監督している。当初はコメディ俳優ジーン・ワイルダーを監督も脚本家も望んだが、プロデューサーにより反対され、アンソニー・ホプキンスが演じることになった。また、ベン役は当初ローレンス・オリヴィエがキャスティングされていたが病気により降板し、バージェス・メレディスが引き継いだ。

 

一種の二重人格もの。本音と建て前をファッツとコーキーで役割分担しているようだ。時に本音を語ることで笑いになる。ファッツと言う人形に本音を担わせることで相手を笑わせたり、相手の本音を引き出したりというやり方はなかなかうまい。ただ、ファッツとして話すのを5分も我慢できないコーキーが、時にファッツなしで行動しているのには若干の違和感がある。もちろん、それが原因で取り乱す場面もあるのだが。

 

冒頭の場面は、コーキーが父親にマジックの初舞台が成功した様子を語るところである。ところが、画面にはコーキーのマジックに誰も目を向けておらず、ついにブチ切れる様子が映され、コーキーの理想と現実の乖離を表現していた。コーキーの父親の描写は冒頭にしか出てこないが、マジシャンとして成功した威厳ある父親が重圧になっていたはずだ。父親に本音を話すことができないコーキーが作り上げたもう1つの人格がファッツということだろう。

 

ファッツを使った芸は途端に人気になりテレビ出演の話まで舞い込んでくる。冒頭の描写を見るに、どこかでコーキーの本音が露になって失敗するんだろうなと思いきや、テレビに出演する条件の健康診断を受けたくないと言って逃げてしまう。てっきりドラッグでもやっているのかと思ったが、コーキーはファッツなしに生きていけない自分が精神的におかしいことを自覚しているようだった。それがバレるのが嫌で健康診断から逃げてしまうのだ。混乱を避けるために人気の少ない場所へやって来たのに、ベンは追いかけてくるし、ペギーの彼は帰って来る。邪魔者なんかいなくなってしまえばいいという彼の本音が彼をそのまま突き動かしていく。取り返しのつかないところで、コーキーは生のないファッツを殺すことができずついに絶命する。やや強引な流れにも見えるが、徐々に追いつめられていく様子をアンソニー・ホプキンスが好演。にしても当時40歳過ぎとは思えないような印象はある。

 

そして愛するペギーの心を掴むためにやったことがトリックであることも本音で種明かししてしまった。一度は離れたペギーもコーキーの純粋な気持ちに気付いて絶命したコーキーのいる小屋へやって来るところで映画は終わる。父の重圧に負けて本音を語れるもう1つの人格を作ったことが悲劇を起こす。その本音を語る純粋さに気付いたペギーにとってもこの上ない悲劇だろう。イギリス人監督、イギリス人主演によるアメリカ映画だが、ニューシネマの系統の1つと言える佳作。

①MBS版(1985年2月12日「火曜シネマランド)
※MBS版はBlu-rayに収録

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