【作品#0422】あの日の声を探して(2014)

2010年代

あの日の声を探して(原題:The Search)

2014年のフランス/ジョージア合作映画
※2015年から日本ではグルジア表記からジョージア表記に変更
上映時間は135分

第2次チェチェン紛争が勃発した1999年のチェチェンでは、両親を銃殺されたショックで声を失った9歳の少年ハジは、まだ赤ん坊の弟を連れて家を出るが…。

監督はミシェル・アザナヴィシウス
撮影はギョーム・シフマン

アブドゥル・カリム・ママツイエフ(ハジ)
ベレニス・ベジョ(キャロル)
マキシム・エメリヤノフ(コーリャ)
アネット・ベニング(ヘレン)

フレッド・ジンネマン監督の「山河遥かなり(1947)」に着想を得た物語。「アーティスト(2011)」でアカデミー賞を受賞したミシェル・アザナヴィシウス監督の次回作で、彼の妻であるベレニス・ベジョも引き続いての出演となった。

 

本作は家を出たハジと彼を家に泊めるキャロル、ハジを探す姉、ふとしたことから軍に入隊することになったコーリャの3視点で物語が進んでいく。3者の物語はある程度同時並行で描かれているものだと完全に思い込んでいたが、なかなか交錯しないコーリャの物語が作品の冒頭に繋がるとは非常に驚かされた。

 

ハジは目の前で両親が銃殺される現場を目撃して声を失ってしまう。一方で彼の弟はまだ赤ちゃんであり大きな声で泣いているのが対照的である。1人の少年が声を失うといえば、後の「異端の鳥(2019)」を思わせるところはあるし、戦争の瓦礫と少年という組み合わせは「太陽の帝国(1987)」を思い出す。9歳の少年が1人で赤ちゃんを育てることはできず、一見他人に預けるという無責任な行為に見えたとしても、ハジの決断は正しかったのである。

 

ハジを孤児だと思ったキャロルは家に泊めることになるが、なかなか声を出さないハジとの距離は縮まらない。何かを与えてもらったらそのお返しに何かを与える。ハジがキャロルにプレゼントしたものは盗んだ物であったが、少年らしい心が表現されていた。また、キャロルが出て行った家でハジが心のままに音楽に合わせて踊る場面も非常に印象に残る。

 

なかなかハジ等の物語に交錯しないコーリャのパートも興味深い。未成年でタバコを吸っていたところを警察に捕まり、国を批判する意思がないと分かるや否や軍隊に入隊させられてしまう。未成年で喫煙するという罪を犯していたとしても、まだ擦れていない素直な青年である。ところが、入隊するとあまりに理不尽な扱いに対して完全に心が折れてしまい、先輩から追いつめられてついに後輩の若者を殴り殺してしまう。すると、それを期に周囲の先輩から認められていくことになる。人間誰しも誰かに認められたいと思うものである。理不尽な軍隊の中であっても、コーリャは殺人という忌々しい行為を契機に認められていくことで徐々に笑顔を取り戻していく。当初はポケットに手を突っ込んでいたら先輩から怒られたのに、後になるとその先輩から「ポケットに手を入れて良いぞ」と認められるところは印象深い。そして、コーリャは戦場への転属願いが認められていざ戦場へ向かうが、逃げ惑う民間人を敵だと思って撃ち殺してしまう。泣き叫ぶコーリャだが、後に先輩らから初めての殺人をしたことでまたしても認められていく。擦れていなかった1人の若者が軍の世界で殺人をすることで認められていく物語はとても悲しい。

 

確かに、キャロルの委員会での演説からハジを引き取ろうとして云々の流れは映画的にはちょっと出来すぎた話になっている印象はある。ただ、張り詰めた状況下で神経質になってしまうところや、擦れていなかった若者が軍の中で認められていく話はとてもリアルに感じられた。ロシアの愛国者がどのように育ってしまうかがよく分かる。哀しき中に希望を見つつ、それでもラストは冒頭に帰って来る。あくまであらゆるものが始まるところで終わる構造も見事であった。

①ソフト版

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