【作品#0472】Ray/レイ(2004)

2000年代

Ray/レイ(原題:Ray)

2004年のアメリカ映画
上映時間は152分

歌手レイ・チャールズの生涯を描く。

監督はテイラー・ハックフォード
音楽はレイ・チャールズ/クレイグ・アームストロング
撮影はパヴェル・エデルマン

ジェイミー・フォックス(レイ・チャールズ)
ケリー・ワシントン(デラ・ビー)
レジーナ・キング(マージー)

ソウルの神様と崇められたレイ・チャールズの伝記映画。レイ・チャールズは撮影現場を訪れるなどしていたが、本作公開の4か月前に亡くなった。アカデミー賞では6部門でノミネートされ、主演男優賞と音響賞の2部門を受賞した。

 

正直なところ、伝記映画としてはちょっと優等生すぎる気はするが、たとえ盲目であっても他人事ではないテーマも描いており見応えはある作品だと感じる。

 

私はレイ・チャールズをリアルタイムで追った世代でもないし、彼の楽曲に詳しいわけでもない。彼が盲目の歌手であり、いくつかの楽曲を知っている程度である。偉大な天才が「実は…」みたいな話は割とよくあるので、たとえレイ・チャールズが自らドラッグに手を染め、妻子がいながらあちこち女性に手を出しまくったとしても特段驚きはない。それに至る動機や心情の描写がやや乏しいというか余白を感じないというか。

 

ドラッグが良くないことだと当然知りながらレイ・チャールズは自ら「俺にもやらせてくれ」と言ってドラッグに手を染めることになる。おそらく自分が盲目だからといって何もできない人間だと思われたくないとか、自分も仲間に入りたいといった気持ちもあったのだろう。そういった観客の想像を掻き立てる描写はやや足りていない気がする。

 

また、レイの父親が家族を捨てて別の女性と結婚し、母親の手で育てられたレイ・チャールズが、記憶のない父親と同じ道を辿っている。母親アレサが苦労してきたのは知っているレイ・チャールズがそれでも父親と同じように半ば妻子をそっちのけで派手な女性関係を築いていた。ハンディキャップを抱えながらも女性を口説くことができる成功体験をもとに次々に女性を口説いていったのだろう。また単純に女性好きだったのかもしれない。

 

そんなレイ・チャールズは何度となく母親アレサの回想シーンが登場する。それでもレイ・チャールズはドラッグも女もやめられない。最後の最後に、「心が盲目になってはいけない」という母親アレサからのメッセージがあるからこそ、レイ・チャールズは立ち直るわけだし、心の盲目こそ万人に伝わるメッセージであろう。この視点で本作を見ると、ちょっと弱いと感じるし、ジェイミー・フォックス含む演者の力に頼り過ぎている印象はある。

 

レイ・チャールズの母親アレサ・ロビンソンを演じたのはシャロン・ウォーレンという女優さんである。彼女は長年劇団で活動し、監督の音声解説によると運よく見つかった女優であるらしい。本作の主人公にとって、それからもちろんレイ・チャールズ本人にとって最も重要なキャラクターと言えるのだが、申し分ない演じっぷりだった。回想シーンに顔を出す程度という決して登場する時間は多くはないのに、非常にインパクトの残る演技をしていた。彼女について調べてみたが、映画への出演は本作を含んでも3本しかないので、彼女の演技を他で見られないのが残念に思うほどである。

 

また、レイ・チャールズが多くの女性関係を持っていたことで、多くの女優が登場する。似たような女性ばかりに手を出していた訳でもないが、それぞれの女性に違った魅力がある。その女性たちへの思いが当時のレイ・チャールズの創作意欲を掻き立て、コンサートやレコーディングで掛け合いのように歌う様はまさに彼らのセックスである。この激しさこそが彼の情熱であり、本能である。露骨なセックスシーンを見せるよりもよっぽど印象に残るものに仕上げていると感じる。

 

成人したレイ・チャールズの様子を大体20年ほど描く物語なので、若干ダイジェストになっている箇所があるのは否めない。ただ、1人の偉大な歌手であり、そして同時に1人の人間であるレイ・チャールズを見事に描き切ったと言えよう。ジェイミー・フォックスの演技は言わずもがな、キャスト同時の演技アンサンブルも楽しめる佳作。

①<テイラー・ハックフォード(監督)>

監督のテイラー・ハックフォードによる単独の音声解説。長年の構想をようやく実現した話、レイ・チャールズと話し合って脚色した話と本人が実話に拘った話、主演クラスから脇役までの俳優の印象、美術スタッフによる当時の再現、メジャースタジオだったらレイ・チャールズの欠点まで描けなかっただろうという話などしてくれる。15年以上前から構想を温め、監督自身が集大成と語っているだけあり、その心意気は感じられる語りぶりである。

①ソフト版

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