タイトル
グッドナイト&グッドラック(原題:Good Night, and Good Luck)
概要
2005年のアメリカ映画
上映時間は93分
あらすじ
1950年代のアメリカでは、マッカーシー上院議員による赤狩りが盛んに行われていた。マッカーシーを敵にすれば共産主義者のレッテルを貼られることを恐れて批判できる者がいない中、ジャーナリストのマローは自らが司会を務める「シー・イット・ナウ」というテレビ番組の中で異議を唱える。
スタッフ
監督はジョージ・クルーニー
製作はスティーヴン・ソダーバーグ
撮影はロバート・エルスウィット
キャスト
デヴィッド・ストラザーン(エドワード・R・マロー)
ジョージ・クルーニー(フレッド・フレンドリー)
ロバート・ダウニー・Jr(ジョー・ワーシュバ)
パトリシア・クラークソン(シャーリー・ワーシュバ)
フランク・ランジェラ(ウィリアム・ペイリー)
ジェフ・ダニエルズ(シグ・ミッケルソン)
感想
実在したジャーナリストのエドワード・R・マローを描いた本作は、普段は脇を固めるデヴィッド・ストラザーンの貴重な主演作となった。「コンフェッション(2002)」で監督デビューしたジョージ・クルーニーが監督、脚本、出演を務め、ギャラが3ドルであったことも話題になった。アカデミー賞では受賞こそならなかったが、作品賞を含む6部門でノミネートされ、ヴェネチア国際映画祭では、デヴィッド・ストラザーンが男優賞、ジョージ・クルーニーとグラント・ヘスロヴが脚本賞を受賞するなど大きな評価を得た。
モノクロ映画で、政治的な話がテーマなので商業用映画ではない。ただ、大きな力に対して小さな個人が声を上げることができるのか。そして、本作のような映画を含むメディアの在り方を問うには十分な作品と言える。
本作が描く1950年代当時はマッカーシーによる赤狩りがピークを迎えていた頃だ。冷戦下におけるアメリカ国内において、敵対国ソ連に代表される共産主義者を徹底的に排除しようという動きで、映画界もその標的となっていた。ただ、そのあまりにも厳酷なやり方には多くの国民が疑問を抱いていたが、一度赤狩り自体を批判すると、「お前も共産主義者か!?」と言われることになり、皆が口を閉ざしていたのだ。そんな中、マローは自らがホストを務める番組の生放送中にマッカーシーによる赤狩りを批判したのだ。その後のマッカーシーによる批判にも冷静に反論したことで、その他メディアもマッカーシー批判を行い、最終的に上院で不信任決議案が出されるに至った。後のMe too運動や、ロシアによるウクライナ侵攻などにおいて、小さな個人が大きな力や権力者に対して声を上げることがどれほど困難で重要なことかは周知の通りである。トップに権限が集中したり、あまりにも少数の個人が力を持ちすぎたりすることの怖さも残念ながら脈々と受け継がれてしまっている。勇気を持った個人が集まればそれは立派な力である。
それから、メディアやジャーナリズムについても触れている作品である。冒頭と最後のマローによるスピーチでは、有名になった「テレビはただの箱」発言がある。何も考えない娯楽が過ぎることに対して警鐘を鳴らしている。テレビの視聴者層に合わせた娯楽番組が多いのは現代の日本も同様だ。と同時に、日本では政治やお金の話はタブーとされる傾向があり、テレビ局もNHKと地上波を合わせても6局しかないという閉ざされた世界だった。近年では、ネットが大きな発達を遂げ、テレビや新聞業界は衰退の道を辿っている。特にここ最近ではYouTubeに専門家が自らのチャンネルを持ち、そこでの発信内容の方がテレビより有益であると多くの人が気付き始めた。情報番組も娯楽番組と化し、浅く広い上辺だけをなぞった番組ばかり見ていても、マローの望んでいたような視聴者のレベルアップは難しいだろう。また、マローのようにジャーナリストが個人でテレビ番組を持つようなことは日本では基本的にはなく、現代のYouTubeでようやくそれが実現されているのではないかと感じる。
ネットが台頭し始めた2000年代初頭の高校時代に私が学んだ「情報」の授業では、テキストに「ネットの情報は嘘があるかもしれないから注意が必要だ」と言った文言が掲載されていた。まるで新聞やテレビの言っていることがすべて正しいとでも言いたげな文言だ。こんな教育をしていたら、情報リテラシーなんて磨かれるわけがない(後の教育がどうなっているかは不明だが)。もちろん、テレビも新聞も、そしてネットも嘘の情報は存在するし、特にネットはすべての情報を網羅するのは不可能なほどの情報に溢れている。ただ、そんな中でも情報に触れなければリテラシーは磨かれないし、自ら取りに行かないと有益な情報を得られない世の中になったことを考えると、視聴者のレベルアップはできたとしても、今まで以上に情報格差が生まれることになるだろう。
本作は短い上映時間ながら、カメラがテレビ局の外に出るのは、ワーシュバの自宅とバーの2回しか出てこない。マローの語りの場面も極力様々なアプローチで撮影して工夫しているし、時折長回しで局内を動き回るのも興味深い。描いたテーマを考えると、観客に何かを考えさせうる十分な魅力の詰まった作品。
音声解説
①<ジョージ・クルーニー(監督/脚本/出演)/グラント・ヘスロヴ(脚本)>
上記2名による対話形式の音声解説。動きの少ない映画ならではの工夫、過去の映画からの引用、セリフが実際に言われたものかどうか、本作が目指したことなどを知的に語っている。ジョージ・クルーニーが彼らしいジョークを時折挟むも、話し相手のグラントからほぼ無視されているのは笑ってしまう。
吹替情報
①ソフト版
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