【作品#0364】クイール(2004)

2000年代

クイール

2004年の日本映画
上映時間は100分

生まれたばかりのラブラドールレトリーバーのクイールは盲導犬の訓練を受けるため多和田に預けられる。

監督は崔洋一
音楽は栗コーダーカルテット
撮影は藤澤順一

小林薫(渡辺満)
椎名桔平(多和田悟)

2001年に刊行された「盲導犬クイールの一生」の映画化であり、椎名桔平が演じた多和田悟は実在の盲導犬訓練士である。

 

本作は主人公の渡辺満の娘にあたる美津子のナレーションを中心に展開していく映画である。盲導犬を題材にした映画であるので、当然視覚障碍者にも本作を楽しんでもらおうという意図は理解できる。ただ、DVDには音声ガイドが副音声で入っているし、そもそもナレーションを美津子が担当する意図は理解しがたいものがある。美津子が登場するのは映画の中盤になってからだし、クイールと関わる場面もほとんど印象に残るものはない。しかも、本作に登場するキャラクターにナレーションを担わせるとなると、そのナレーションの視点が映画内に出来てしまうため、どの視点で映画を見るべきか混乱を招くことになる。まだこの美津子が終始登場するなら理解できるが、渡辺家以外の場面での出来事を美津子は知らないはずなので大きな違和感がある。また、盲導犬になるための訓練などを観客向けに解説する役割を担うなら、多和田悟を演じた椎名桔平がナレーションを担当するのが辛うじて受け入れられるレベルであり、出演者以外の人物にナレーションを担当してもらうべきだったと感じる。

 

そのナレーションで解説してくれる作品の割には冒頭から説明・描写不足を感じる。水戸レンなるラブラドールレトリーバーの飼い主は生まれたばかりの子犬を盲導犬にしたいと多和田悟に連絡して依頼している。おそらく生まれた子犬の里親を募集するようなことをしている人物だとは察するが、なぜ盲導犬にさせたいのかの説明はしてくれない。思い付きでものを言って、生まれたばかりの子犬をいきなり親元から離れさせようとしている軽薄な人物に見えてしまうのはマイナスポイントだろう。

 

以降は、クイールが盲導犬センターで訓練を受ける様子を中心に描いていくのだが、途中から渡辺満の話がメインになっていく。とはいえ、渡辺満というキャラクターは極めて掘り下げが浅く、どんな人物なのかもあまり伝わってこない。そして、ナレーションは美津子で語られていき、渡辺満がもうすぐ死ぬこともナレーションであっさり明らかにされてしまう。そして渡辺満が死ぬと、クイールのその後がモンタージュの如く、サクッと描かれてクイールも死を迎えて映画は終わる。振り返ってみると、非常に焦点がぶれた映画という印象である。

 

映画全体を見れば、非常に淡々とした語り口でクライマックスらしいクライマックスも用意すらされていない印象がある。映画らしい絵作りや演出もあまり感じられず、テレビのスペシャルドラマくらいに見えてしまった。盲導犬という関わる人の少ない犬を知ることのできる教育映画とも言えるが、だったらドキュメンタリーにした方が伝わったんじゃないかと思う。また、本作の崔洋一監督が同年に本作の正反対とも言える「血と骨(2004)」を監督しているのは興味深いところだ。

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