【作品#0134】007/スペクター(2015)

2010年代

007/スペクター(原題:Spectre)

2015年のイギリス/アメリカ合作映画
上映時間は148分

メキシコでスタジアム爆破を防いだボンドは、勝手な行動をしたとして上司のMから謹慎処分を喰らう。前任のMからの遺言で行動していたボンドは、上司に無断でローマへ向かう。

監督はサム・メンデス
音楽はトーマス・ニューマン
撮影はホイテ・ヴァン・ホイテマ

ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド)
クリストフ・ヴァルツ(ブロフェルド)
レア・セドゥ(マドレーヌ・スワン)
レイフ・ファインズ(M)
モニカ・ベルッチ(ルチア・スキアラ)
ベン・ウィショー(Q)
ナオミ・ハリス(ミス・マネーペニー)
ロリー・キニア(タナー)
イェスパー・クリステンセン(ミスター・ホワイト)

前作「007/スカイフォール(2012)」がシリーズ過去最高の収益を記録したことからサム・メンデスが続投。全世界で8億ドルを超えるヒットを記録したが、前作の11億ドルを考えると物足りない数字。

 

ストーリーは、事実上の兄弟関係を描いた前作のストーリーラインをなぞるようにブロフェルドが登場し、死んだはずなのに生きていたところまで同じである。なので前作の焼き直し感があるのも事実である。

 

本作はタイトルにも使用されている「スペクター問題」が解消されて初めての作品になる。「007/サンダーボール作戦(1965)」の製作時のトラブルにより、ジェームズ・ボンドの敵対組織スペクターと宿敵ブロフェルドを本シリーズで使えなくなっていたが、長い時を経てようやく日の目を浴びることになった。そんな事情と、前作のラストでMのオフィスが再現されて、原点回帰を明言して終わった前作の続きと考えると、本作は過去作への病的なオマージュの嵐になっている。ただ、そのオマージュの荒唐無稽さが前作で作ったシリアスな作風とアンマッチな印象である。

 

オマージュについては、タコのイメージは「007/オクトパシー(1983)」、死者の日のボンドの衣装は「007/死ぬのは奴らだ(1973)」、ヘリコプターアクションは「007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」、本作でのヘリの1回転は、車が1回転するアクションのある「007/黄金銃を持つ男(1974)」、ボンドがボタン1つで車から脱出するのは「007/ゴールドフィンガー(1964)」、ボンドガールと食堂車といえば「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」、デイヴ・バウティスタ演じる大男との戦いは大男ジョーズの登場した「007/私を愛したスパイ(1977)」「007/ムーンレイカー(1979)」、列車内での格闘は「007/ロシアより愛をこめて(1963)」、雪山の施設は「女王陛下の007(1969)」、銃を撃とうとして銃弾を抜いていたというのは「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」、辞職してボンドガールと車で走り去るのは「女王陛下の007(1969)」といったように、多くのオマージュに溢れている。良くシリーズを見ている人ならこれ以上のことを思い出すことができるだろう。

 

さらに、「偶然」や「運」が味方する展開は本シリーズっぽくもあるが、特に前作から積み上げてきたシリアスな雰囲気にはマッチしていない。翼の取れた飛行機が偶然にも敵の車に衝突するところや、マドレーヌを助けたボンドが飛び降りるとネットがあるところなど、ピアース・ブロスナンやロジャー・ムーアが演じていればハマったであろう演出はどう考えても荒唐無稽にしか見えない。

 

アクションというと、序盤のヘリコプターでの一連のシーンはまずまずであると感じる。ちなみに冒頭に男女が2人で歩く様子を長回しで捉えるのは、オーソン・ウェルズ監督の「黒い罠(1957)」を思わせる。ただ、特にカーチェイスはがっかりレベル。ボンドがマネーペニーと電話しながらのカーチェイスなんだが、アクションと電話を交互に映すことで映像的なスピード感は失われ、カーチェイス自体にもアイデアがまるでない。老人の車のコミカルなくだりも作風に合っていなかった。

 

そして終盤はボンドが正しかったことに周囲が気付いて、マネーペニーやQだけでなくMまでもが現場に出てきてチーム戦の様相を呈していくところは「ミッション:インポッシブル」シリーズの影響を感じる。その「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル(2011)」に出演していたレア・セドゥが今回のボンドガールなのは偶然だろうか。

 

退屈な映画とまでは思わなかったが、前作で作り上げた作風と内容がアンマッチで、原点回帰の心意気が空回りしていた印象。

「007/ドクター・ノオ(1962)」…シリーズ1作目
「007/ロシアより愛をこめて(1963)」…シリーズ2作目
「007/ゴールドフィンガー(1964)」…シリーズ3作目
「007/サンダーボール作戦(1965)」…シリーズ4作目
「007は二度死ぬ(1967)」…シリーズ5作目
「女王陛下の007(1969)」…シリーズ6作目
「007/ダイヤモンドは永遠に(1971)」…シリーズ7作目
「007/死ぬのは奴らだ(1973)」…シリーズ8作目
「007/黄金銃を持つ男(1974)」…シリーズ9作目
「007/私を愛したスパイ(1977)」…シリーズ10作目
「007/ムーンレイカー(1979)」…シリーズ11作目
「007/ユア・アイズ・オンリー(1981)」…シリーズ12作目
「007/オクトパシー(1983)」…シリーズ13作目
「007/美しき獲物たち(1985)」…シリーズ14作目
「007/リビング・デイライツ(1987)」…シリーズ15作目
「007/消されたライセンス(1989)」…シリーズ16作目
「007/ゴールデン・アイ(1995)」…シリーズ17作目
「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」…シリーズ18作目
「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)」…シリーズ19作目
「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」…シリーズ20作目
「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」…シリーズ21作目
「007/慰めの報酬(2008)」…シリーズ22作目
「007/スカイフォール(2012)」…シリーズ23作目
「007/スペクター(2015)」…シリーズ24作目
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2021)」…シリーズ25作目
「007/カジノ・ロワイヤル(1967)」…本シリーズのパロディ
「ネバーセイ・ネバーアゲイン(1983)」…「007/サンダーボール作戦」のリメイク
「ジェームズ・ボンドとして(2021)」…ダニエル・クレイグに焦点を当てたドキュメンタリー
「サウンド・オブ・007(2022)」…本シリーズの音楽/主題歌に関するドキュメンタリー

①ソフト版

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