タイトル
ダラス・バイヤーズクラブ(原題:Dallas Buyers Club)
概要
2013年のアメリカ映画
上映時間は117分
あらすじ
1980年代中頃のアメリカ州テキサス。仕事中の事故で病院に搬送されたロンは、検査の結果、エイズに罹患しており余命30日であると言い渡される。アメリカ国内では十分な治療薬がないと知ったロンはメキシコの医師から治療薬を仕入れてエイズ患者に配布する「ダラス・バイヤーズクラブ」を立ち上げる。
スタッフ
監督はジャン=マルク・ヴァレ
撮影はイヴ・ベランジェ
キャスト
マシュー・マコノヒー(ロン)
ジャレッド・レト(レイヨン)
ジェニファー・ガーナー(イヴ)
感想
アカデミー賞では主演男優賞、助演男優賞、メイク・ヘアスタイリング賞の3部門を受賞した作品。ちなみにアカデミー賞で主演男優賞と助演男優賞を同じ作品から出したのは「ミスティック・リバー(2003)」以来となる5度目の快挙を成し遂げた。
製作の契機となったのは本作の主人公のモデルに当たる人物への1992年のインタビューであったが、なかなか映画化まで辿り着かず、20年以上の時を経て主人公と同じテキサス州出身のマシュー・マコノヒーの手に脚本が渡って製作にこぎつけた。
エイズにより余命30日を言い渡され、ゲイでもないのに周囲からゲイ扱いされるという過酷な状況ながら、主人公のキャラクターがそこまで重苦しくないものに仕立てている。失うものが何もない主人公の行動力はすさまじく、アメリカで未承認の薬があると知れば、メキシコ、日本、オランダと世界各地を飛び回っている。まさにマシュー・マコノヒーが主人公のロンに魂を吹き込んだと言える名演だった。
実際には違ったそうだが、偏見を持っていた側の人間が偏見を持たれる側の人間になってしまう。オムニバス映画「トワイライト・ゾーン/超次元の体験(1983)」の第1話なんかと思わせる内容である。エイズになるのはゲイであると思っていた女好きの主人公がエイズになってしまう。病院で話しかけてきた女性医師イヴには、「看護師は引っ込んでろ」と言い、医師=男性、看護師=女性という偏見も持っている。というのも、舞台となるテキサス州はアメリカ南部に位置する保守的な土地柄である。そんなロンが、同じくエイズに罹患しているゲイのレイヨンと出会ったことで考えが変わっていく。
本作では、治療成績が悪いと知りながら治験を続ける病院、悪性の強い薬剤を開発した会社、治験結果が芳しくないと知りながら治療薬AZTを承認したFDAが悪者として描かれている。当時のエイズは不治の病と言われ、患者数も死者数も右肩上がりで増えていた。エイズは、ちょっとした風邪になったくらいで死んでしまうほどの日和見感染症である。当時は未解明の部分も多く、多少の副作用があったとしても治療効果を期待して治療を続けていたという過去もある。まして現代におけるエイズ治療でも併用禁止や併用注意の薬剤は山ほどあるくらいに大変な治療であることは変わりない。
ロンはそんなAZTを承認したFDAを相手取った裁判で敗訴こそするが、ペプチドの個人使用の許可を勝ち取ることに成功する。新たな仲間を見つけて共に戦う姿にはやはり胸を打たれるものがある。
また、終盤にメキシコへやって来たロンが研究で使用している蛾のいる部屋に入って両手を広げる場面がある。光に集まる蛾と同じように生きるという光に向かう主人公が重なる。そして最後はロデオに再挑戦するところが静止画となって終わる。ロデオの中でも「ラフストック」という教義であれば、暴れ牛に8秒以上乗り続けることができると合格である。たった8秒。ロンの短い生涯ともこのロデオ競技が重なり、その暴れ馬の乗りこなす輝ける一瞬を切り取った静止画で終わるのもジーンと来るものがある。
法律云々ではなく、人として正しい行動が取れるかどうか。偏見を持つ側にいた人間が偏見を持たれる側になったこと人間として正しい行動ができるかというテーマはベタではあるが、マシュー・マコノヒー演じるロンが、ずば抜けた行動力で周りを巻き込み影響を与える姿には勇気をもらえるし、何かを始めるのに遅すぎることなんてないと思わせられる。「マッド(2012)」や「ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013)」など、この当時のマシュー・マコノヒーの演技はどこか神がかっており、その中でも本作は代表作と言える。
関連作品
「北北西に進路を取れ(1959)」…本作の序盤に、ロック・ハドソンがエイズで亡くなったことが話題に上る。その際に、この映画を見たことがないのかという場面があるが、主演したのはケイリー・グラントである。
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