【作品#0089】真空地帯(1952)

1950年代

真空地帯

1952年の日本映画
上映時間は129分

昭和19年1月。2年3か月の刑期を終えた木谷一等兵は、大阪の歩兵中隊に復帰する。同年兵はすでにおらず、木谷は中隊の中で徐々に浮いた存在になっていく。

監督は山本薩夫
脚本は山形雄策
音楽は團伊玖磨

木村功(木谷一等兵)
下元勉(立沢准尉)
加藤嘉(林中尉)
利根はる恵(花枝)
金子信雄(金子軍曹)
岡田英次(岡本法務少尉)
西村晃(大住軍曹)

ちょっとした誘惑に負けてしまい、本来いることができたレールから外れてしまったごくごく普通の人間を木村功が好演。ただ、その純粋すぎる性格が災いして、状況が悪い方へいってしまう。人から疎まれて、何かあると真っ先に疑われ、ついには攻撃的な人間になってしまう。我慢していた木谷の怒りが爆発するビンタシーンは本作の大きな見どころであった。

 

絶対に叶うことのない遊郭の女性との約束と、自分を刑務所送りにした林中尉への復讐のために刑務所での酷い仕打ちに耐えてきた木谷だったが、復帰した林中尉に事情を聞くと本当に悪いのは自分を気にかけてくれていた金子軍曹だったのだ。今更違うと言われても困るのだ。

 

ラストで南方行きの船に乗る木谷の手には花枝の写真があった。木谷はまだ花枝のことを信じている。観客には花枝が田舎に帰ったことが知らされるが、木谷は知らない。南方では死ぬかもしれないし、仮に生きて帰って来たとしても花枝には会えないだろう。観客は知っているのに、主人公だけ知らない結末ほど悲しいものはない。どんな時代でも正直に生きることが決して正しいと言えないからこそ、時代を超えても魅力的な作品なのだろう。

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