【作品#0143】東京物語(1953)

1950年代

東京物語

1953年の日本映画
上映時間は136分

尾道で暮らしている老夫婦の周吉ととみは長男が暮らす東京にやって来ることになる。せっかくはるばるやって来たのに長男一家は周吉ととみをそこまで歓迎せず、彼らの亡くなった息子の妻・紀子が熱心に彼らを東京案内することになり…。

監督は小津安二郎
音楽は斎藤高順
撮影は厚田雄春

笠智衆(平山周吉)
東山千栄子(平山とみ)
原節子(平山紀子)
山村聡(平山幸一)
三宅邦子(平山文子)
杉村春子(金子志げ)
中村信郎(金子康造)
大坂志郎(平山敬三)
香川京子(平山京子)
東野英治郎(沼田)

日本のみならず世界でも大きな評価を得る小津安二郎の代表作。オールタイムベストなどの企画をやると必ず上位に食い込む世界が認めた名作。いわゆる「紀子三部作」の最後の作品となった。

 

紀子が未亡人であるという設定とあり、紀子三部作の流れで見ると毛色の違う作品だが、紀子が周囲から結婚するように言われるという意味では共通している。前作「麦秋(1951)」では紀子の兄を演じた笠智衆が本作では主人公の義父を演じ、未亡人の規子に「もう忘れてくれてもいい」とか「もし良い人がいたら嫁いでもいい」と無神経に言ってしまうあたり、前作「麦秋(1951)」のキャラクターと通ずるものがある。

 

未亡人となった場合には元の姓に戻すことはできるのだが(当時の事情は分からないが)、紀子は夫が亡くなって8年間も夫の姓である平山を名乗っている。本作では紀子の家族は一切登場しない。田舎に家族がいるのか、もしくは夫と同じように戦争で亡くなってしまったのかは分かりかねるが、もし家族がいないのならば、たとえ夫が亡くなったとしても平山家が紀子にとって唯一の家族なのかもしれない。

 

血は繋がっていないのに義理の両親には仕事を休んでまで東京案内をして、家に招いてお小遣いまであげているという聖人のようなキャラクターである。一方で長男の幸一や長女の志げは両親をして「昔は優しい子だったのに」と言われるキャラクターである。その長男や長女の冷たい行動や言動を見て末っ子の京子は紀子に愚痴をこぼす。その両者を短い2カットで表現した秀逸な箇所がある。中盤、義理の両親を家に招いた紀子が彼らに団扇で仰ぐシーンがある。そして彼らの帰りを待つ幸一と志げが自分たちに向けて団扇を仰ぐシーンに切り替わる。団扇を仰ぐ対象が相手なのか自分なのかを繋げることで彼らの性格を表す見事な表現である。

 

子供たちへの不満は決して本人には言わず、周吉は旧友との久しぶりの再会の場で愚痴をこぼすことになる。ところが、長男の幸一は医者である。性格がどうあれ、社会的立場が圧倒的に高い医者とあれば、周囲からは「ご立派ですね」と言われるのがオチである。紛れもない事実に対して閉口して不満をためていくとなると、成瀬巳喜男監督で、本作で紀子を演じた原節子が主演した「めし(1951)」を思い出さずにいられない。社会的立場が上で稼ぎも上となると、親は何も言えない。これは前作「麦秋(1951)」における杉村春子が感じたものと通底している。

 

そんな勝手な幸一や志げを見て育った末っ子の京子は上京せずに地元で教師をしている。そして彼女も愚痴は本人に言わずに紀子に言っている。ところが紀子は「結婚したらそっちの生活もあるのよ。大人になるってそういうことよ」と諭しており、彼らのことを決して否定していない。主役にそう言わせているのだから、「時代の流れはしょうがない」ということなのだろう。そしてこれは紀子自身にも当てはまる言葉である。終盤、「別の人と結婚してもいい」と言う周吉に対して紀子は、「昌二さんのことを忘れる日もあるんです。(そんなことを隠して生きている自分のことを)ずるいんです」と返答する。結婚した相手が戦死し、すでに8年が経過している。彼女にも8年という抗うことのできない時間が経過している。だからこそ周吉がとみの形見として時計を渡すところに大いに意義がある。この場面には何度見ても泣かされてしまう。

 

時間が流れるというのは人間誰しも感じるものである。そういった感覚を表現した本作が「時代が流れても」愛され続けることろに名作たる所以があるのだろう。紛うことなき傑作。

「晩春(1949)」…紀子3部作の1作目
「麦秋(1951)」…紀子3部作の2作目
「東京物語(1953)」…紀子3部作の3作目
「東京画(1985)」…小津安二郎監督を敬愛するドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースが東京を訪れて笠智衆や厚田雄春にインタビューする様子が含まれるドキュメンタリー。本編のオープニングとエンディングの映像が使用されている。
「東京家族(2012)」…山田洋次監督によるリメイク

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